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コナンの物語に登場した"あの装置"に、私たちの技術が生きていた。

先日公開したブログで、劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』に登場する巨大パラボラアンテナが、実は当社・新免鉄工所の施工対象であったことをご紹介しました。

今回はその中身の話――つまり、あの大きな"円盤"の内部構造の防錆処理について、少しだけ専門的なお話を。

なぜ"塗装しなかった"のか?

このアンテナの構造部において、通常の塗料(有機系塗膜)は使用できない、という制限がありました。
というのも、塗料に含まれる有機物が、電波観測に悪影響を与える可能性があるためです。

「とにかく"電波に干渉しない素材で""錆びさせないこと"」

この難題に対して私たちが採用したのが、鉄よりも先に腐食して守ってくれる"犠牲防食"の考え方による、亜鉛溶射でした。

なぜ亜鉛?アルミじゃダメ?

アルミニウム溶射も候補に上がりましたが、点錆(局所的な腐食)の懸念があったため、最終的に亜鉛を選択。

- 鉄を電気化学的に保護する「犠牲陽極作用」
- 成膜後も密着性が高く、自己修復性もある
- 電波に干渉しない"無機金属"

という観点から、まさに最適解でした。

たわみ"との戦い。前代未聞の繊細な施工

施工当時の話を、今の会長に聞いてみました。

例えば、亜鉛を溶射すると当然重量が増すため、
「望遠鏡の精密な焦点がズレる」という懸念が出たとのこと。

微細なたわみが起これば、観測の精度に直結する――そんな緊張感の中、
厚みや溶射条件を微調整しながら"世界でただ一つの特殊仕様"で仕上げました。

ちなみに、この仕様は後にも先にも一度きりです。

8年後の"答え合わせ"

昭和63年。運用開始から8年後、先方による内部点検が行われた結果――

「まったく錆びていない。性能も完璧」

との評価をいただきました。  
現場としても「やってよかった」「あれは誇っていい」と、今も語り継がれるプロジェクトです。

そして次へ:JAXAのアンテナにも

この実績が評価され、後にJAXA臼田宇宙空間観測所の64m・54mアンテナの防食塗装にも関わらせていただきました。

技術は見えなくても、ちゃんと"宇宙"につながっている

映画のスクリーンでは、ほんの一瞬で通り過ぎていく"背景"かもしれません。  
でもその背景には、「塗らないことを選び、でも絶対に錆びさせない」という選択と技術が詰まっています。

技術者として、静かに、そしてちょっとだけ声を大にして言いたい。

> あのアンテナの中身、うちがやりました!

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